不毛地帯
[第2話]
――昭和34年7月。10/22放送
壹岐正(唐沢寿明)は東京支社航空機部への異動を申し出た。
軍人時代の人脈を利用しないことを条件に大門社長(原田芳雄)の率いる近畿商事に入社したものの、防衛庁の第2次防次期主力戦闘機(FX)の受注が一部の政治家の“利権”に利用されていることを知ったからだ。
FXの有力候補は近畿商事が推薦するラッキード社の戦闘機「ラッキードF104」と東京商事のグラント社の「スーパードラゴンF11」の2機。今のままでは、東京商事航空機部の鮫島(遠藤憲一)の工作で「スーパードラゴンF11」に決定が見込まれていた。
そんなある日、近畿商事東京支社長・里井(岸部一徳)は壹岐に航空機部部長の松本(斉木しげる)を紹介する。さらに防衛庁空幕の調査課出身の小出(松重豊)を壱岐の部下につけた。
壹岐たちは、グラント社から総理側に巨額の賄賂が渡っていることまで握るが、細部の金の流れはつかめていなかった。
防衛庁の川又(柳葉敏郎)が作成した“ラッキードF104の優秀性が記載された自衛隊調査団の報告書”を官房長・貝塚(段田安則)が握りつぶしたことを知る。そこで大門社長は、自由党総務会長・大川(亀石征一郎)の力を借りようとした。
夜。壹岐卓に毎朝新聞政治部記者の田原(阿部サダヲ)が訪ねてきた。田原は、壹岐が近畿商事に入社したのは近畿商事の推す「ラッキードF104」のためではないのかと言ったが、壹岐は否定した。田原は“川又が左遷されるという噂”を壹岐に告げる。
そんな中、「国会で貝塚を喚問する」と約束した大川が態度を急変させる。大川に鮫島が手を回したのだ。
それを知った壹岐は、総理の側近・経済企画庁長官の久松(伊東四朗)と面会する。壱岐と久松とは昔からの仲だったのだ。久松は壱岐に2次防はグラントに決定したことを告げる。総理に巨額の金が渡っているというのだ。壱岐は久松に「ラッキードF104の調査報告書」を貝塚に握りつぶされたことや、スーパードラゴンが実戦では使われていないことを説明した。
壹岐と小出は総理たちへの送金ルートを追った。そして送金に京浜銀行で行われていることをつかむと、告発文を大蔵省に匿名で送りつけた。京浜銀行には大蔵省から検査が入り、国防会議が延期されることなる。
そんなある中、川又は西部航空方面隊の司令官に赴任するよう命じられる。しかし川又は「次期戦闘機が未決定のまま空幕を離れるわけにはいかない」と抵抗するが、貝塚は、現在の川又のポストの後任は既に決まっているとして引かない。それを聞いた川又は、「このまま引き下がるつもりはない」と言った。
一方、小出が極秘に入手した「グラントの価格見積表」を壱岐は里井に手渡した。早速、里井はロスへ飛んだ。ラッキード側に価格の再検討をさせるためだ。
その夜、壹岐は、兵頭(竹野内豊)と一緒にクラブ『ル・ボア』を訪ねた。紅子(天海祐希)が席にやってくると、壱岐は家に帰宅するために電話を入れると言って退席する。
家に電話すると妻・佳子(和久井映美)が出る。佳子は里井から“緊急の用”ということで何度も電話があったこと壱岐に伝えた。
ただならぬ事態を感じた壹岐が会社に連絡をすると、ラッキードF104がテストフライト中に墜落したことを、里井は壹岐に伝えてきた。
壱岐の働きで、ラッキード社の「ラッキードF104」が受注されると思われていた。ところが、「ラッキードF104」がテストフライト中に原因不明の事故で墜落する。
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キャスト
壹岐正 / 唐沢寿明(からさわとしあき)1912年生まれ。陸軍大学校を首席で卒業したエリート軍人である。
第二次大戦中は、軍の最高統帥機関だった大本営の参謀として作戦立案をしていた。
終戦を受け入れない関東軍を説得するため、停戦命令書を携えて満州に向かう先でソ連軍に拘束された。
その後軍事裁判で強制労働25年の刑を宣告、シベリア極北の流刑地ラゾに送られた。
11年間に及ぶ強制労働に耐え昭和31年に帰国。
帰国後近畿商事に入社。
兵頭信一良 / 竹野内豊(たけのうちゆたか)
近畿商事東京支社鉄鋼部勤務。
陸軍士官学校の壹岐の後輩にあたる。
近畿商事の将来を世界的な視点でとらえている。
商社の世界に戸惑う壹岐の、良き理解者となる。
壹岐佳子 / 和久井映見(わくいえみ)
壹岐正の妻。
壹岐の陸軍大学校時代の担当教官であった坂野の娘である。
壹岐のシベリア抑留中は女手ひとつで二人の子供を育てた。
大阪府庁で働いている。
壹岐直子 / 多部未華子(たべみかこ)
壹岐の娘。
佳子の苦労を目の当たりにしてきたため、壹岐に二度と戦争には関わらないでほしい、と懇願した。
父の商社就職を心から喜んでいる。
川又伊佐雄 / 柳葉敏郎(やなぎばとしろう)
防衛庁の空将補で、噂によると次期空幕長らしい。
自衛隊のあり方に疑問を抱いているので、自分が空幕長になって、自衛隊を国民に認められるものに変えたいと考えている。
壹岐とは陸軍士官学校時代からの同期で、親友。壹岐がシベリアに抑留されている間は佳子に仕事を紹介するなど、壹岐家を支えた。
貝塚道生 / 段田安則(だんたやすのり)
防衛庁官房長。
警察出身の元内務省役員。鮫島と手を結び、防衛庁の次期主力戦闘機にグラント社のスーパードラゴンを採用するよう総理派に働きかけている。
芦田国雄 / 古田新太(ふるたあらた)
川又の部下。防衛部の防衛課計画班長。
小出とは防衛庁空幕時代の同僚である。
金と女に目がないが、気の弱い臆病な男。
谷川正治 / 橋爪功(はしづめいさお)
満州関東軍の幕僚。
壹岐ともどもシベリアに送還。
帰国後は、シベリア帰還者と遺族のための組織「朔風会」運営。
竹村勝 / 中丸新将(なかまるしんしょう)
秋津紀武 / 中村敦夫(なかむらあつお)
大陸鉄道司令官、中将。
壹岐とはシベリア抑留中にハバロフスクで再会した。
極東軍事裁判に、ソ連側の証人として出廷することを強要され、一度はそれを受け入れた。
秋津精輝 / 佐々木蔵之介(ささきくらのすけ)
秋津中将の息子で、千里の兄。
フィリピンで終戦を迎えた。多くの部下を死なせてしまったことに大きな責任を感じ、仏門に入って厳しい修業をしている。
秋津千里 / 小雪(こゆき)
大陸鉄道司令官・秋津中将の娘。
京都に住んでいる。夢は陶芸家である。
壹岐に「父の最期について話を聞かせてほしい」と手紙を送る。
亡き父の面影を感じさせる壹岐に心を惹かれる。
久松清蔵 / 伊東四朗(いとうしろう)
経済企画庁長官。
国防会議のメンバー。国防会議では防衛庁の次期主力戦闘機を決定する。
壹岐とは、戦時中に早期和平工作について議論しあった仲で、旧知の間柄である。
政界や官僚とのつながりがとても広い。
田原秀雄 / 阿部サダヲ(あべさだを)
毎朝新聞政治部記者。
現在は防衛庁の、次期主力戦闘機の機種決定に関連する問題を取材中。
ジャーナリスト魂にあふれる人間。
新聞記者ならではの情報で、鋭い視点で壹岐らに迫る。
浜中紅子 / 天海祐希(あまみゆうき)
クラブ「ル・ボア」経営者の娘。
店でピアノの弾き語りをしている。
情報通で、商社の人間とも交流が深い。
兵頭とは以前からの顔なじみ。
鮫島辰三 / 遠藤憲一(えんどうけんいち)
東京商事航空機部長。
「航空機の東京商事」という実績を築いた人物である。
防衛庁の次期主力戦闘機には、グラント社のスーパードラゴンを推している。
目的のためには手段を選ばない男で、別名「空のギャング」。
大門一三 / 原田芳雄(はらだよしお)
近畿商事代表取締役社長。
開拓精神旺盛で、大局を見極め大胆な施策を打ち出すトップらしさ溢れる人物。
近畿商事の国際化にあたって、壹岐の情報収集力や状況分析力に目をつけ、近畿商事で働かないかと誘う。
里井達也 / 岸部一徳(きしべいっとく)
近畿商事東京支社長。
鉄鋼や航空機を扱う東京支社のトップ。防衛庁の次期主力戦闘機受注を獲得するために、防衛庁の中枢と太いパイプを持つ壹岐を航空機部に異動させればよいと提案する。防衛庁の次期主力戦闘機にラッキード社のF104を推している。
松本晴彦 / 斉木しげる(さいきしげる)
小出宏 / 松重豊(まつしげゆたか)
近畿商事東京支社航空機部に勤務。
防衛庁の次期主力戦闘機受注のために、川又の部下である芦田に接触。
かつては防衛庁の防衛部調査課班長であったが、近畿商事に機密情報を漏らしたことが発覚しかけたのをきっかけに近畿商事に入社という過去を持つ。
自分を拾ってくれた近畿商事に恩義を感じて、実績を挙げようとしている。
海部要 / 梶原善(かじはらぜん)
塙四郎 / 袴田吉彦(はかまだよしひこ)
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